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私は大工の娘、籠田淳子です。

投稿者:所長 2015年03月01日

 

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 今年1月に、籠田淳子さんが代表を務める有限会社ゼムケンサービスが、内閣府「女性が輝く企業」特命担当大臣表彰を受賞しました。一昨年の内閣府「女性のチャレンジ賞」、昨年の「ダイバーシティ経営企業100選表彰」に続く受賞です。北九州市にとっても、大変嬉しいニュースでした。

 

 私と籠田さんとのご縁は、平成23年、『北九ネット“しおり”』という、私たちのグループに、ゲストスピーカーとしてお越しいただいた時からです。

籠田写真

 籠田さんの会社は、当時、社員11名中8名が女性という会社。男性社会と思われる建設業界にあって、この女性比率の高さに、まず驚きました。

 そして、社員採用についてのお話がありました。仕事も忙しくなり社員を募集したところ、子育て中で、フルタイムでは働けない女性が多かったそうです。初めは、お客様の都合に合わせる建設業界でそのような働き方では、無理。なんて甘いと思ったそうです。でも、考え方を変え、2人で1人の仕事をすればいいという発想に切り替え、時間で仕事をするのではなく、仕事を分ければいいと思い、子育て中の方を2人採用されたそうです。当時はワークシェアリングという言葉も知らず、結果としてワークシェアリングになっていたということです。籠田さんのこの発想が、柔軟で、独創的かつ、先進性を生み出す鍵だと思います。

 

 この働く人の視点に立って、働き方を変えていく発想がいいなと思い、北九州市のワーク・ライフ・バランス表彰への応募をお願いしました。その結果「北九州市ワーク・ライフ・バランス市長賞企業部門」を受賞。これは、個人賞に続く快挙ですが、籠田さんは、この時の受賞について、「ようやく企業として認めてもらった。社員も喜び、やる気につながっていった」とおっしゃっています。

 

 籠田さんの会社は、冒頭で触れたように、内閣府や経済産業省の賞を次々と受賞されています。でもその受賞のベースには、籠田さんのたゆまぬチャレンジがあります。女性力で建設業を明るく強くする「JKDT女性建築デザインチーム」の創設、在宅勤務への挑戦、さらに、産学官連携で女性力をビジネスにするシステム開発を慶應義塾大学とすすめていく予定だそうです。籠田さんは、いつも進化を続けています。会社の規模は小粒でも、やっていることは最先端、これからがますます楽しみです。

 

 こんな先駆的な籠田さんですが、私の大好きな言葉は「私は大工の娘、籠田淳子」という言葉です。お父様やお母様の創業の精神を忘れず、現場が大好きで、職人が大好きな籠田さんです。そして、籠田さんの笑顔や、社員の皆さんの笑顔もいいなと思います。働く人の幸せが、企業の業績につながっていく。これからも社員の皆さんとのチームワークで、新しい企業の姿を創っていってほしいと期待しています。

母が重たい・母娘関係

投稿者:所長 2015年02月01日

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  ムーブの相談室には、年間約4,700件の相談が寄せられています。そして、多くの相談の背景には、「娘にとっての重たい母」母と娘の関係の問題がよくあると、相談員から聴いていました。それが気になり、昨年秋、信田さよ子さんの『さよならお母さん 墓守娘が決断する時』という本を読みました。そこには、母親が、どれほど娘の人生に重くのしかかっているか、それを愛情と読み替えているかを、リアルに再現していました。濃淡の差はあっても、多くの母娘関係に、ありうることだし、それがひどくなると重たい母が娘を追い詰めてしまうのだなあと、相談員のいう意味がようやく理解できました。

 

 

決断する時

 

 そんな中、今年の対人援助職者セミナーでは、是非、信田さよ子さんをお招きして、母と娘の関係に、どう対人援助職者が対応すれば良いのかを、お話ししていただこうということになりました。

さっそく、信田さんに講演を依頼。しかし、「対人援助職者向けには、母娘の講演はやっていない」と断られてしまいました。そこで、何故、講演をお願いしたいのかを訴え、ようやく講演のOKが。

そして、実現したセミナーが、1月10日(土)のセミナーの『カウンセリングの現場からみる母娘関係』。鹿児島など遠くからの参加者を含め、定員の2倍を超える方々が参加してくださいました。

 

信田さんは、「母娘問題を男女共同参画センターで話すのは初めて」と、おしゃっていましたが、受講者にとっては、大変意義のあるセミナーとなりました。

 

 受講者の感想を一部ご紹介します。

  • (母の)愛情によって相手(娘)を弱体化すること=支配=依存について考えさせられた。
  • 援助者が誰の立場に立って聴くかという「立場性」を自覚することが重要だということがわかった。

  【娘は母からの被害を受け、母は娘への加害者性を持つ。この認識がカウンセラー

  として娘の立場に立つという「立場性」の自覚となる。中立はない。】

  • 距離の取り方を具体的にどうすればよいのかがわかりました。

【距離をとる「逃げる 会わない 宅急便を受け取らない 居場所を隠す」。方法論「言葉の掛け方・丁寧語を使う 時間の使い方・顔をあわせる時間を少なくする 期待を撤去する・わかってもらいたいなど」】

  • 母親を研究することが大切ということが心に響いた。

  【母ってどんな人なのだろう?母はなぜあのような生き方しかできなかったん

  だろう?研究の出発点は「どうして?」母親がひとりの人間としてクリアに

  なる】       

 *【 】内は西本補足

 

など、対人援助職者の方々にとって、様々なヒントをいただきました。

 

また、多くの受講者が自分のことと重ね合わせてお話を聴かれたようで、「気がついたら自分の生活に当てはめて聴いていました」などの感想が多くありました。

援助職者以外にも当事者として悩んでいる方からは、「母親との関係による罪悪感から少し楽になれた」、「これで生き延びることができます」とあり、苦しんでいる方のお役に立つこともできました。

 

ご自身もおっしゃっていますが、信田さんのお話は、「すべてカウンセリングの経験から学んだこと」だそうです。率直で、ユーモアあふれる、カウンセラーとしての情熱が伝わるセミナーでした。改めて、援助職者にとっても、当事者にとっても、「母と娘の関係」は大変難しい問題なのだということを考えさせられました。

また、機会があれば、どこかで、このテーマ「母娘の関係」を取り上げたいと思っています。

新年明けましておめでとう

投稿者:所長 2015年01月04日

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 新年明けまして、おめでとうございます。

 いよいよ今年、ムーブは開所20周年を迎えます。

 

 ムーブは、北九州市の女性たちが「自分たちの女性センターが欲しい」と声をあげて15年、北九州市の「ルネッサンス構想」に「総合女性センター(仮称)設置の推進」が掲げられて7年、待望の「女性センター」として平成7年7月1日にオープンしました。

 平成14年4月には、「北九州市男女共同参画社会の形成の推進に関する条例」によって男女共同参画センターは男女共同参画社会形成の拠点施設として位置づけられ、これにともない、女性センターは「北九州市立男女共同参画センター」と名称を変更。女性の地位向上とエンパワーメントを中心課題としてきたムーブは、男女を視野に入れた活動を展開することとなりました。

 

 ムーブ開所時の基本理念は、一つはあらゆる世代の男女が出会い、交流し、新しい自分を発見し、行動へとつなげていく「創造と発見の広場」、一つはここから情報が生み出される「コミュニケーション型広場」の創設です。機能は、情報とネットワーキング。活動のキーポイントは、「知る・交わる・考える・生まれる」です。

 従来の啓発指導型ではなく、21世紀に通用する新しい共生社会の実現につながる活動を目差したものでした。

 これらの基本理念をはじめとする考え方は、20年たった今も、私たちが受け継ぐものとして、方向性を示しています。

 

 20周年を迎える今月には、皆様のおかげで、開所からの利用者が約580万人に達することになります。

 私が、ムーブの所長を拝命したのが、一昨年4月、こんなに素晴らしい施設を創設してくださった先輩方に感謝しつつ、ムーブで、仕事をさせていただけることに、誇りとやりがい、そして責任を感じながら仕事をしています。

 

 金子みすゞは、「みんな違って みんないい」と言っていますが、男性も女性も、枠にはめられずに、一人ひとり個性を持った人として、互いを尊重し、もっと自由に生きられる社会になればいいなと思って仕事をしています。

 私が、子どものころは、幸せなことに、女子だということで、制約を受けたことがあまりありませんでした。でも、社会に出たとたん、女性には社会の制約が沢山ありました。

 また、仕事を通じて、働く女性の悩み、女性や少女に対する暴力、性的マイノリティーの問題など多くのことを知りました。また、生きづらさに悩んでいる男性もいます。そして、世界には、ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんが訴え続けているように、学校に行けない女の子たちが沢山います。知ることによって、これまで知らなかった問題が見えてきます。世の中には、知らないでいることや、考えが及ばないことによる差別や偏見があります。

 もっと、もっと、男女が自由に、いろいろなことを選択でき、自由に生きられる社会を目差して、20周年を迎えるムーブは、男女共同参画社会形成の拠点として、皆様と共に、これからも「知り・交わり・考える・生まれる」をキーワードに活動を行ってまいります。

 今年もよろしくお願いいたします。

 

 

   
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助産師の嶋井元子さん

投稿者:所長 2014年12月02日

 

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 今回は、助産師の嶋井さんを、ご紹介します。嶋井さんは、先月22日、「第13回 福岡県男女共同参画表彰 女性の先駆的活動部門」で表彰されました。助産師という仕事を通じて、様々な活動をされています。これまでの地道な活動が評価されてほんとうによかったと思います。

 

 嶋井さんは、昭和60年に、助産師の国家資格を取得し、総合病院の産婦人科などで、多くの経験を積んだ後、平成17年にご自身の助産院を開業。助産師の仕事を通して「女性が自分らしく自立して生きて行くこと」をサポートする。それが自分の生き方だと、おっしゃっています。

 

 私と嶋井さんとのご縁は、北九州市役所の児童家庭課で、平成17年度に、妊産婦の訪問事業や不妊相談をスタートした時からです。その後、思春期の子どもたちの性教育のあり方を検討する「思春期保健連絡協議会」のメンバーにもなっていただきました。今では、この協議会で検討したプログラムで、嶋井さんの所属する助産師会の方々のご協力で、小中学校の児童生徒の思春期教育が行われています。この思春期教育の中では、「命の大切さの授業」が行われ、男子生徒と女子生徒が、お互いを理解し、尊重して、付き合うことは、どういうことかということを教えていただいています。

 

 いろいろな事業をご一緒させていただいてきましたが、嶋井さんには、「助産師という仕事に誇りをもち、女性が女性として自分らしく生きていくことをサポートする」という揺るぎない意思があります。

 

 嶋井さんについて驚いた、エピソードをもう一つご紹介します。平成22年、ロシナンテスの川原尚行さんから、「スーダンの母子保健の改善事業を手伝ってくれる人を探しているので、誰か、紹介してほしい」と、当時、子ども家庭局の私のところに相談がありました。母子保健の担当者に相談しますと、助産師会に相談するのがいいと、会長の嶋井さんに相談しました。なんと、「私が行きます」と即答。相談した私たちもびっくり。すごい女性がいると、大変、頼もしく思いました。

 

 スーダンでは、80%の妊婦が自宅で出産するという状況。村のお産のほとんどが、伝統的産婆や村落助産師によって行われ、母子手帳もなく、妊婦健診も受けずいきなり村落助産師が呼ばれてお産をする人もいるそうです。また、診療所でのお産のケースでも、2時間後には村に帰っていきます。性器切除という習慣もあり、女性にとって、お産は大変苦痛を伴うもので、出産の環境も衛生的なものとはいえない。5歳までに、1000人のうち100人が死亡というのが現実だそうです。

 

 その中で、嶋井さんは、診療所と村落助産師が連携することを提案し、今まで行われていなかった産後訪問を村落助産師とともに行い、診療所の存在を村人に知らせることから始めました。また、ロシナンテススタッフとともに母親学級に参加を促す工夫をされ、2回目に訪問したときには、随分、妊婦健診も浸透してきたということです。

 村落助産師の水準を上げることも目標でしたが、これも2年目の訪問の時には、かなり水準が上がっていたということ。2013年までに短期専門家として4回スーダンを訪れています。今年から、あらたなプロジェクトがはじまり、スーダンでの活動は継続しています。

 

 

 嶋井さんの活動は、北九州市の女性たちへのサポートから、スーダンの女性たちへ。さらに、NPOでの子育て・親支援と、幅広く活動されています。今後、どんな活動にチャレンジされるのか楽しみです。

 

 

助産師

「北九州市における女性活躍推進実態調査」を実施

投稿者:所長 2014年11月01日

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 女性が輝く社会を目指してと、言われるけれども、北九州市でその実態はどうかと

いうとどうもわからない。

 先月25日に、(公財)21世紀職業財団会長 岩田喜美枝さんと、元「日経WOMAN」

編集長 野村浩子さんをお招きして、『働き女子の夢をかなえるキャリアアップ講座』

の公開講座を開催いたしました。当日、講師の岩田喜美枝さんが、「今日、参加の皆

さんは、目をきらきらさせている。」と、おっしゃられたコメントに象徴されるよう

に、最近、働く女性をテーマにした講座を開催しますと、意欲ある、熱い思いを持っ

た女性たちに出会います。確かに、意欲にあふれ、スキルやネットワークを広げよう

とする多くの女性たちが、この北九州市にいます。

 

 では、企業は本当に、この女性たちを十分活かしきれているのか?企業は、どう考え

ているのか?育児休業の実態は?

 実は、国や県レベルの実態を調査したものはありますが、北九州市の実態はわかって

いません。

 そういうことで、先月20日から、従業員数20人以上の事業所にお願いして、女性活躍

の実態調査をしています。今回は、国との比較も考えて、厚生労働省が実施する「雇用

均等基本調査」の調査項目をもとに調査票を作成し、北九州市の実態を調べています。

お忙しい中、対象となった事業所の皆様には大変ご迷惑をおかけしています。たくさん

の事業所から回答があればと願っています。

 

 この調査は,北九州市の女性の活躍推進の現状を把握しようというものですが,今回、

併せて、『北九州市の男女共同参画統計データ集2008』の改定作業も行っていま

す。北九州市における男女共同参画の現状ならびにその推移進展を明らかにする統計

資料です。

 様々な分野にわたる統計で、もととなるデータをインターネットで検索したり、様々

な関係部署からデータを出していただいたりと、これも皆様に、ご迷惑をおかけしなが

らの作業です。

 職員は、担当の仕事をしながらの作業で、結構大変ですが、男女共同参画推進の拠点

施設としての大切な役割の一つとして、「男女共同参画に関するデータの情報収集・

発信」があります。ムーブに行けば、こんな情報がわかると、ムーブがそんな場所で

ありたいと思って行っています。

 

 実は、私も少し作業を手伝っていますが、作業をしていると、知らなかったことな

ど、新たな発見が色々あります。さて、どんな北九州市の男女共同参画の実態が見え

てくるか、皆さん楽しみにしていてください。

 

実 態 調 査 票  

 

データ集
 2008年データ集

 

  

「青鞜」創刊号と「山の動く日来る」

投稿者:所長 2014年09月26日

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「山の動く日来る

かく云へども人われを信ぜじ

山はしばらく眠りしのみ

その昔において

山は皆火に燃えて動きしものを

されど、そは信ぜずともよし

人よ、ああ、ただこれを信ぜよ

すべて眠りし(おなご)

今ぞ目覚めて動くなる」 

 

 

 

 

 

「そぞろごと」(書)

 

 この詩は、歌人 与謝野晶子が歴史的な雑誌「青踏」創刊号(1911年)に寄せた9ページにわたる「そぞろごと」の冒頭部分です。北九州市立男女共同参画センター(当時 北九州市立女性センター)“ムーブ”の開所に際して、当時の財団法人アジア女性交流・研究フォーラム高橋久子初代理事長から、この冒頭部分の自筆の書を寄贈いただき、2階ホール入口横に掲げられています。ムーブ開所時の熱い思いが伝わってきます。

 ムーブにお越しいただいた時には、是非、ごらんください。先月、書だけでは読みづらいとの、皆様の要望を受け、読みやすいようプレートを作成しました。

 

 なんと、このプレート作成を契機に、ムーブ図書室に、「青踏」創刊号から最終号第6巻第2号までの復刻版の存在を知りました。冒頭の「そぞろごと」からページをめくっていくと、有名な平塚らいてう の「青踏発刊に際して」が、16ページ続きます。

 

 「元始、女性は実に太陽であった。真正(しんせい)の人であった。

今、女性は月である。他によって生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である。・・・」と、

 

 遠い昔の私の青春時代、1970年代、女性解放運動(ウーマンリブ運動)が盛んな時代に、始めてこの言葉に触れ、感動を覚え、励まされました。この創刊の辞は、日本の女性解放史上の最初の宣言とされ、今も多くの女性を励ましています。

 ようやく、雑誌そのものに出会うことができました。・・・表紙は、高村光太郎の妻となる高村智恵子(当時 長沼智恵)が描いたという黄色地に青踏の文字と、女性の立ち姿です。

 

 さて、今に時間を進めると、女性たちの周りは、今が最後のチャンスと、「女性が輝く社会を目指して」と盛んに叫ばれ、取り組みが始められています。山は動くのか。

 

 さて、上記の「山の動く日来る」は、

 

「一人称にてのみ物書かばや

 われは女ぞ

 一人称にてのみ物書かばや

 われは われは」       と続きます。

 

自分の責任で、自らの言葉で、表現する。それは女と、声高らかに謳っています。

山を動かすのは、私たち女性自身でもあるのです。

 

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「グループ相談」と「自助グループ」

投稿者:所長 2014年09月02日

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 今日は、ムーブのグループ相談と自助グループをご紹介します。

 

 ムーブには、ムーブ相談室というものがあります。皆さんご存知ですか。相談室では、「こころと生き方の一般相談」、「性別による人権侵害相談」などの1対1で行う相談のほか、昨年度から、6年ぶりにグループ相談が再スタートしました。

 実は、グループ相談の再スタートには、「ムーブのグループ相談に、自分自身が参加し、力をもらうことができたから、是非、グループ相談を開催したい」という、相談員の方の熱い思いがありました。

 

 また、先日、私自身もグループ相談の大切さを改めて感じる機会がありました。

 ウィメンズカウンセリング京都のフェミニストカウンセラー 竹之下雅代さんのDV防止講演会「DV被害者支援の現場から」の講演です。講演の中で竹之下さんは、DVや虐待の被害者が、「自分の声を取り戻す」ということを話されていました。「話すこと、語ることは、自分の声を研鑽していくことであり、語ることで、これまでの間違った認識を修正していくことができる」ということです。

 また、アリス・マラー氏の言葉を引用して、「誰か一人でもいい、その人のほんとうの気持ちを理解してくれる人がいてくれたかどうかが、(選択力・自己肯定感に)違いをうむ。」ということを、事例を通してご紹介いただきました。グループ相談の再開は間違いなかったのだと勇気づけられました。

 

 

 さて、グループ相談を再スタートし、昨年度は、6月~8月に「自分らしく生きる」というテーマ、また、10月~12月に、「コミュニケーションが苦手だと感じているあなたへのお誘い」のテーマで、グループ相談を実施しました。

 今年度は、5月~7月に、「対人援助職者のためのグループ相談 ~自分にもどれる大切なひととき」を開催しました。

 グループ相談は、テーマに沿って、同じ悩みを抱えている方々に参加していただきます。生きづらさや、同じ悩みを抱えている人同士が支え合える場で、ひとりひとりが感じたこと、気づきを大切にしています。

 大変嬉しいことに、これまで実施したグループ相談は、グループ相談から自立し、自助グループとしてムーブで活動をしています。

 

 また、市民の方々が独自に立ち上げた自助グループも活動を行っています。今では、従来からのグループに加え、あわせて、6つの自助グループが活動を行っています。

 

 グループ相談や自助グループでは、皆さんが安心して自分のことを話せる場を提供することで、他者の考えや価値観にもふれながら、自尊感情を高め、自分にあった心の整え方や課題解決方法を見つけ出す糸口になっています。誰かから何かを一方的にしてもらったり、してあげる関係ではなく、「癒し・癒され、助け・助けられ、持ちつ・持たれる」という、人として対等な関係性の中で、自尊感情が高まり、生きる力をもらいます。

 今、ムーブ相談室では、様々な悩みを抱えている方々からの相談が絶えることがありません。年々、その相談も増えています。そんな中、ひとりで悩まず、人と人とのつながりの中から、生きる力を得ていく活動である、グループ相談や自助グループの活動はこれからも必要な活動と思っています。互いにつながることによって、生きづらさから解放され、尊厳をもって生きていくことを少しでもお手伝いできればと思っています。

 

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女性の働く場に、変化が起こっています!

投稿者:所長 2014年07月31日

 

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 3週間にわたり開催されたムーブフェスタも終わり、これからは、次々と主催講座がスタートしていきます。その中から、ムーブが力を入れている「働き女子の夢をかなえるキャリアアップ講座~働く女子限定キャリアアップ&次世代リーダー養成講座」をご紹介します。

 

 この講座は平成23年度から開催している講座で、企業などで働く女性が、社会の様々な場面でリーダーや管理職としていきいきと能力を発揮することを支援する講座です。受講生のスキルやモチベーションの向上、受講生どうしのネットワークづくりのお手伝いをしています。その結果、第1~3期までに受講した働く女性のネットワークが形成されています。

 

 さて、募集に当たっては、一般公募で自ら手を上げて応募していただく方も大歓迎ですが、昨年度から企業を直接尋ねて、この講座の広報を行っています。昨年度は、募集定員30名のうち、企業からの推薦を受け9社11名の方々のご参加をいただきました。今年度も、企業を訪問し、企業の方々と情報交換を行いながら、広報を行っています。

 企業の方々とお話ししていると、女性への期待、そして、実際の女性活躍の動きが、着実に広がっていることを実感します。

・女性の活躍推進のための担当部署を設置したという企業

・短時間勤務制度を活用する女性管理職

・女性の採用枠の拡充

・女子力をいかした事業展開 

など、確実に働く現場に変化が起こっています。

 

 当事者の働く女性はどうでしょう。

・キャリアには無駄はないと、様々な経験を通じて学ぶ女性たち

・仕事と家事・育児の両立を上手にこなす女性たち

さらにこの講座で、

・部下へのコミュニケーションの方法を学んだり

・違う業界の発想の違いを学んだり

なによりも多くのロールモデルとの出会い、ネットワークを広げる女性たちの姿を見ることができます。

 

 このブログを読まれているあなたも、ぜひ、ご参加いただき、スキルアップや、ネットワークを広げていただきたいと思います。また、9月13日と10月25日の土曜日の午後は公開講座になっていますので、受講生以外の一般の方も参加できます。皆様のご参加をお待ちしています。

 

働き女子の夢をかなえるキャリアアップ講座

 

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7月はムーブフェスタへ

投稿者:所長 2014年07月01日

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 7月は、ムーブフェスタです。開所以来、19年続いている、ムーブの一大イベント。

 7月5日から26日まで、3週間にわたり、多彩な事業が繰り広げられます。

 まず、7月5日はオープニングの講演会。今年は、勝間和代さんをお迎えします。

「女性の活躍」、「ワーク・ライフ・バランス」など男女共同参画に関するニュース

が、連日のように新聞などで取り上げられています。勝間さんの講演会のテーマは、

「男女共同参画ってこんなに簡単だったんだ テキパキ勤務が少子化問題も財政問題

も解決する」です。男女共同参画のための「鍵」を明快に、解き明かしていただきます。

 

 そして、7月12日は、初のムーブ縁日。「おもしろサイエンス&防災エンスショー」

縁日ブースが沢山、店開きをします。これまでムーブにご縁のあまりなかった、子ど

たちや保護者の方々の参加を期待しています。その他、ジェンダー問題調査・研究

報告会などのムーブ主催事業のほか、今年は、国連ウィメン日本協会北九州の北九州

設立20周年記念事業も開催されます。

 

 なんといっても、注目は、多彩な市民企画事業です。今年も約100の市民企画事業が

開催されます。ムーブを「自主的な活動の拠点」にという、ムーブ開所時の願いを今も

脈々と受け継いでいる事業です。それぞれの団体の皆さまは、ムーブフェスタに向けて

アイデア知恵をだし、それぞれ、企画をあたため、この7月に選りすぐりの企画が勢

ぞろいしています。

 講演会、シンポジウム、ワールドカフェ、映画の上映、コンサート、体験活動、

フリーマーケット、サマーカーニバルなど多彩な魅力ある企画ばかりです。

 開所した平成7年からずっと、市民企画事業に参加されている団体や最近になって新

たに参加された団体など、ムーブとのかかわりはそれぞれ様々ですが、いずれも今の時

代を反映した企画ばかりです。

 

 7月は何度でも、ムーブに足をお運びください。

 内容は、下記のホームページで見ることができます。

 皆さまのご参加を、心よりお待ちしています。

 

 

ムーブフェスタ特設サイトはこちらから

 

 

 

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小倉織(こくらおり)と築城則子(ついきのりこ)さん

投稿者:所長 2014年06月01日

 

私の手元に、『築城則子 縞』がある。先日、築城さんに、お会いすることがscan-10

あって、いただいた冊子。気に入って、時々ページをめくっている。 

 「小倉こくら縞帯しまおび」、「ねりぬき着物きもの」、「つむぎおり着物きもの」それぞれに、

面影おもかげ」、「ゆう」、つきげん」・・・と名前がついている。帯や

着物の気品ある力強い存在感。どんな人が、どんな時に着るのか、

どんな風に着こなすことができるのか、想像は広がる。

 

 北九州市には素晴らしい多くの女性がいる。また、凄い人に

出会った。築城さんは、一度生産が途絶えた小倉織を見事に復元・再生し、小倉織に

新たな命を吹き込んだ。本格的に染織に進んで約40年。

現在に通用する築城則子さんの小倉織の世界を切り開いた。

 

 私が知っていたのは機械織の汎用品「縞縞 SHIMA―SHIMA」シリーズの

風呂敷、財布。この機械織だけでなく、本来の手織りもご自身の工房で制作している。

それが、この冊子の作品。さて、どんな風につくられるのか。織る前の糸を並べる作業

から始まり、3日徹夜は当たり前で、日が昇り、日が沈むまで工房に篭りっきり。色の

組み合わせは、自然や音楽からヒントを得るという。その様子を築城さんは次のように

語っている。

 

「デザインの前に瞑想の演奏会が始まる。流れる水を掬いあげるように、ゆっくり、

大切にイメージを抱けたら、コンダクターは任せるばかり。縞宇宙の内側で、曲想が

導く最終楽章まで自由で心浮きたつ時を過ごす。」と

 

 小倉織との出会いは、地元の骨董店で、なめし革のような質感のまるで絹のような

光沢を持つ不思議な布との出会いから始まった。築城さんは、その出会いを現在の

小倉織にまで完成させた。小倉織の世界をずっと追求して、極める。すごいなあと

思う。そんな女性が北九州市にいることを、是非ご紹介したいと思った。

 

 築城さんは、一度創った作品は、すぐに忘れると言われる。これは、前に創った作品

には、もうこだわらない。次に進んでいくということだと思う。

 さて、次にどんな作品が生まれるのか、楽しみにしたい。