大学における性的マイノリティの学生支援

投稿者:所長 2015年09月01日

虹と報告書

 

 ムーブでは、北九州市の男女共同参画社会の形成の障害となっている問題をジェンダーの視点から掘り起こし、問題解決の糸口を探る「ジェンダー問題調査・研究支援事業」を実施しています。

 平成26年度は、北九州市立大学教授の河嶋静代先生による調査・研究「性的マイノリティの学生支援における課題」を支援しました。そして、今年7月に調査・研究の報告会を開催しました。

 

 当初は、「性的マイノリティに対する大学のサポート体制」と「性的マイノリティの学生サークル」についての調査・研究となっていましたが、是非、「全国の大学の実態を調べて欲しい」とお願いし、全国の大学や短大へのアンケート調査も合わせて行っていただくことができました。性的マイノリティに対する調査は全国でもほとんどないということです。

 

 その結果、回答のあった大学241校のうち121校、約半数が性的マイノリティの学生から相談があったことが分かりました。相談内容は、「学生生活」「家族・友人、「就職、将来について」などとなっています。

 しかし、「健康診断」「トイレ利用」「授業での名前の呼び方」「更衣室・シャワールームの利用」「通称名での学生証の発行」など特別の配慮をしている大学等があるものの、性的マイノリティの学生に対して、243校のうち161校、約7割が特別な配慮をしていないことが分かりました。

 

 調査では、さらに、先駆的な大学での取組みを紹介しています。今後、これらの大学をロールモデルとして、他の大学等へと支援が広がっていくことを期待したいものです。

 河嶋先生の所属する北九州市立大学では、既に、今年の4月から学生証や卒業証明書に通称名が使える制度を導入したということです。

  

 ムーブでは、平成24年度、性的マイノリティの方からの相談を受けたことをきっかけに、対人援助者セミナーに「性的マイノリティ」を取り上げ、平成25年度は、当事者を交えての講演会を実施しました。

 

 渋谷区では、今年4月、同性カップルをパートナーと証明する条例を施行するなどの動きもあります。

7月の調査・研究の報告会では、遠くは東京など市外からの参加者も多く、性的マイノリティに対する関心の深さを感じました。

 

 報告会で、コメンテーターをしていただいた、元国際基督教大学のジェンダー研究センター長の田中かず子さんのコメント、「性的マイノリティは、マイノリティの問題だけでなく、マジョリティ側の問題でもある」と言われたことが印象に残っています。

 マジョリティ側の理解を深めるため、これからも取り組んで行っていくことが必要だと考えています。

 

*「性的マイノリティ」とは、性別違和感がなく異性を愛する人が多数者であることに対し、LGBT(IQ)の人たちを総称して

  使うことが多い。LGBTとは、英語のレズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランス

  ジェンダー(Transgender)の頭文字である。

(平成26年度 ジェンダー問題調査・研究支援事業報告書P6より)