母が重たい・母娘関係
ムーブの相談室には、年間約4,700件の相談が寄せられています。そして、多くの相談の背景には、「娘にとっての重たい母」母と娘の関係の問題がよくあると、相談員から聴いていました。それが気になり、昨年秋、信田さよ子さんの『さよならお母さん 墓守娘が決断する時』という本を読みました。そこには、母親が、どれほど娘の人生に重くのしかかっているか、それを愛情と読み替えているかを、リアルに再現していました。濃淡の差はあっても、多くの母娘関係に、ありうることだし、それがひどくなると重たい母が娘を追い詰めてしまうのだなあと、相談員のいう意味がようやく理解できました。
そんな中、今年の対人援助職者セミナーでは、是非、信田さよ子さんをお招きして、母と娘の関係に、どう対人援助職者が対応すれば良いのかを、お話ししていただこうということになりました。
さっそく、信田さんに講演を依頼。しかし、「対人援助職者向けには、母娘の講演はやっていない」と断られてしまいました。そこで、何故、講演をお願いしたいのかを訴え、ようやく講演のOKが。
そして、実現したセミナーが、1月10日(土)のセミナーの『カウンセリングの現場からみる母娘関係』。鹿児島など遠くからの参加者を含め、定員の2倍を超える方々が参加してくださいました。
信田さんは、「母娘問題を男女共同参画センターで話すのは初めて」と、おしゃっていましたが、受講者にとっては、大変意義のあるセミナーとなりました。
受講者の感想を一部ご紹介します。
- (母の)愛情によって相手(娘)を弱体化すること=支配=依存について考えさせられた。
- 援助者が誰の立場に立って聴くかという「立場性」を自覚することが重要だということがわかった。
【娘は母からの被害を受け、母は娘への加害者性を持つ。この認識がカウンセラー
として娘の立場に立つという「立場性」の自覚となる。中立はない。】
- 距離の取り方を具体的にどうすればよいのかがわかりました。
【距離をとる「逃げる 会わない 宅急便を受け取らない 居場所を隠す」。方法論「言葉の掛け方・丁寧語を使う 時間の使い方・顔をあわせる時間を少なくする 期待を撤去する・わかってもらいたいなど」】
- 母親を研究することが大切ということが心に響いた。
【母ってどんな人なのだろう?母はなぜあのような生き方しかできなかったん
だろう?研究の出発点は「どうして?」母親がひとりの人間としてクリアに
なる】
*【 】内は西本補足
など、対人援助職者の方々にとって、様々なヒントをいただきました。
また、多くの受講者が自分のことと重ね合わせてお話を聴かれたようで、「気がついたら自分の生活に当てはめて聴いていました」などの感想が多くありました。
援助職者以外にも当事者として悩んでいる方からは、「母親との関係による罪悪感から少し楽になれた」、「これで生き延びることができます」とあり、苦しんでいる方のお役に立つこともできました。
ご自身もおっしゃっていますが、信田さんのお話は、「すべてカウンセリングの経験から学んだこと」だそうです。率直で、ユーモアあふれる、カウンセラーとしての情熱が伝わるセミナーでした。改めて、援助職者にとっても、当事者にとっても、「母と娘の関係」は大変難しい問題なのだということを考えさせられました。
また、機会があれば、どこかで、このテーマ「母娘の関係」を取り上げたいと思っています。